こんにちは、管理栄養士の横川仁美です。

今回は、渓流食堂さん(養殖場白山堂さん)が扱うニジマスとイワナの栄養面について、詳しく解説していきます。

下に示したのは、渓流食堂さんのニジマスとイワナの栄養価の一覧表です。

【渓流食堂さんのニジマス100g中の栄養価】

たんぱく質 脂質 エネルギー 水分 炭水化物 灰分 ナトリウム 食塩相当量
19.7g 10.7g 175kcal 68.1g 0.1g未満 1.5g 24mg 0.06g

【渓流食堂さんのイワナ100g中の栄養価】

たんぱく質 脂質 エネルギー 水分 炭水化物 灰分 ナトリウム 食塩相当量
20.3g 2.0g 99kcal 76.1g 0.1g未満 1.6g 37mg 0.09g

一覧だけ見ても、値が高いのか低いのか、身体に良いのか悪いのか、ピンとこないかもしれません。

そこでとくに、表中にピンク色で示した「たんぱく質」「脂質」「カロリー」の3要素について、海の魚、お肉、大豆製品、卵などと比較しながら解説していきます。

渓流魚のたんぱく質について

魚に多く含まれる栄養素と言えば、まずたんぱく質が思い浮かぶのではないでしょうか。たんぱく質は炭水化物、脂質と並ぶ3大栄養素のひとつ。筋肉、臓器、皮膚、血液など身体を作る材料となり、「最も大切な栄養素」とも言われています。たんぱく質は、魚に多く含まれており、渓流魚であるニジマスやイワナも例外ではありません。とはいえ、実際のたんぱく質量をご存知の方は少ないのではないでしょうか。

下の表は、食材に含まれるたんぱく質の量を比較したものです。

【食材100g当たりのたんぱく質量】

  たんぱく質量(g)
キハダマグロ 24.3
豚ロース(脂身なし) 21.1
渓流食堂さんのイワナ 20.3
アトランティックサーモン(たいようさけ) 20.1
渓流食堂さんのニジマス 19.7
豚ロース(脂身付き) 19.3
ひき割り納豆 16.6
豚バラ(脂身付き) 14.4
12.3
木綿豆腐 6.6
普通牛乳 3.3

では、さっそく渓流食堂さんのニジマス・イワナについて、注目して見ていきましょう。

ニジマス(虹鱒)のたんぱく質

渓流食堂さんのニジマス100g中のたんぱく質量は、19.7g。海の魚であるキハダマグロよりも、4.6g少ないものの、アトランティックサーモンとは、ほぼ同等のたんぱく質量を示しています。

続いて肉と比較してみましょう。豚ロース(脂身なし)よりもわずか1.4g少ないものの、豚ロース(脂身付き)とは、ほぼ同等のたんぱく質量を示しています。ちなみに、豚バラ(脂身付き)のたんぱく質量は14.4gなので、ニジマスの方が5.3gも多く含まれている計算になります。

最近は「たんぱく質を多く摂るなら肉」と考え、魚よりも肉を選ばれている方も多いようです。しかし、肉と魚のたんぱく質量は実は同程度なのです。マグロはもちろん、淡水魚もたんぱく質に富んでいます。加えて多くの魚は、肉よりも消化に優しい特徴を持ち合わせている良さもあるんです。

さらに、ご家庭で馴染みが深い食材と比較してみましょう。ニジマスのたんぱく質量は、ひき割り納豆の1.2倍、卵の1.6倍、木綿豆腐の3.0倍、普通牛乳にいたっては実に6.0倍も多いことがわかります。

イワナ(岩魚)のたんぱく質

渓流食堂さんのイワナについても、ニジマスと同様に見ていきましょう。イワナ100g中のたんぱく質量は20.3g。キハダマグロよりも4.0g少ないものの、アトランティックサーモンとは、同等かそれ以上の値を示しています。

続いて肉との比較です。豚ロース(脂身なし)、豚ロース(脂身付き)と比較しても、引けをとらない値を示しています。

ご家庭で馴染みが深い食材との比較では、イワナのたんぱく質量は、ひき割り納豆の1.2倍、卵の1.7倍、木綿豆腐の3.1倍、普通牛乳にいたっては実に6.2倍も高い値となっています。

これらの値から、ニジマスやイワナも優れたたんぱく源であることが、改めておわかりいただけたと思います。

渓流魚の脂質について

たんぱく質を比較した食材で、脂質についても見てみましょう。

【食材100g当たりの脂質量】

  脂質量(g)
豚バラ(脂身付き) 35.4
豚ロース(脂身付き) 19.2
アトランティックサーモン(たいようさけ) 16.5
豚ロース(脂身なし) 11.9
渓流食堂さんのニジマス 10.7
10.3
ひき割り納豆 10.0
木綿豆腐 4.2
普通牛乳 3.8
渓流食堂さんのイワナ 2.0
キハダマグロ 1.0

もっとも脂質が低い食材はキハダマグロ、続いて渓流食堂さんのイワナという結果でした! 渓流食堂さんのニジマスも決して脂質が多いとは言えず、私たちがふだん食べている卵や納豆と同じくらいしかありません。

例えば、夕飯の献立を豚バラ肉(脂身付き)からニジマスに変えるだけで24.7g、イワナに変えると33.4gも、脂質を抑えることができるんです。

ニジマスやイワナは、たんぱく質の補給だけでなく、食生活の欧米化により「脂質の過剰摂取」が問題視されている現代日本人の「食生活の助っ人役」としても期待されています。

渓流魚のカロリーについて

「ニジマスとイワナの脂質についてはわかったが、カロリーが気になる……」という方もおられるかもしれません。カロリーについても同様に見ていきましょう。

【食材100g当たりのカロリー】

  エネルギー(kcal)
豚バラ(脂身付き) 395
豚ロース(脂身付き) 263
アトランティックサーモン(たいようさけ) 241
豚ロース(脂身なし) 202
ひきわり納豆 194
渓流食堂さんのニジマス 175
151
キハダマグロ 112
渓流食堂さんのイワナ 99
木綿豆腐 72
普通牛乳 67

ニジマスやイワナのカロリーは、今回比較した肉やアトランティックサーモンよりも、低いのが特徴です。渓流食堂さんのニジマスのカロリーは、ひき割り納豆と卵の中間くらい。イワナにいたっては、低カロリーの代表格と言われているキハダマグロよりもさらに低い99kcal! カロリーが低い魚の仲間であることがわかりますね。

ちなみに一般的に魚介類の炭水化物は少ないとされています(かまぼこやちくわなどの加工品には多く含まれるので注意が必要です)。流食食堂さんのニジマスやイワナであれば、0.1g未満しかありません。今、流行りの「糖質」に関しても、ニジマスやイワナは低めの食材に入ります。

渓流魚のその他の栄養素について

ここからは、ニジマス・イワナに含まれる、その他の気になる栄養素についても見ていきます。

ニジマスに含まれる栄養素

ビタミンB1

糖質をエネルギーに変えるのを助けます。不足すると糖質を上手く利用できず、疲れやすくなったり、だるさを感じやすくなったりします。とくに、夏バテ対策に役立つビタミンとして注目されています。

ビタミンB12

「赤いビタミン」とも呼ばれ、赤血球の材料になります。ビタミンB12は、魚類や肉類などの動物性食品に多く、野菜には含まれていません。ベジタリアンの方には不足しやすい栄養素と言えます。日ごろから心身ともに疲れやすい方は、意識して摂ってみてください。疲労回復に役立ちます。

パントテン酸

パントテン酸はビタミンB群の一種で、栄養関係の本などでは、パントテン酸が多い食材としてニジマスが紹介されていることもあります。パントテン酸自体あまり聞きなれないかもしれませんが、三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)の代謝をスムーズにし、私たちの身体を支えてくれる栄養素です。

DHA・EPA(ドコサヘキサエン酸・エイコサペンタエン酸)

体内で作り出すことができず、食べ物から摂る必要がある脂(必須脂肪酸)のひとつです。脳の働きをサポートしたり、血液をサラサラにする健康成分と言われています。最近では魚を食べる機会が減ったこともあり、不足に陥りがちです。イワシやサバなどの青魚(青い背の魚)にも多く含まれています。

その他ニジマスには、ビタミンE、ビタミンD、マグネシウムなども含まれています。

イワナに含まれる栄養素

ビタミンE

ビタミンEには抗酸化作用があり、美肌作りやアンチエイジングに役立ちます。また、末消血管を広げて血行をよくする働きがあると言われ、冷えやくすみ対策などにも良いと言われていますナッツ類、かぼちゃなどにも含まれています。

ビタミンD

尿中へのカルシウムの排泄を減らし、カルシウムの吸収をサポートする働きがあるとされています。骨が不健康になると、骨粗鬆症となり骨が折れやすくなるイメージが強いかと思います。しかし影響はそればかりではありません。顔のシワやたるみの原因にもなるんです。そのため、健康面だけでなく、美容面でもカルシウムと合わせて摂りたい栄養素とされてます。ビタミンDは、魚介類はもちろん、卵類、きのこ類などにも含まれています。

なお、ビタミンDは牛乳にも含まれていますが、100g中のビタミンD量は、牛乳0.3㎍に対して、イワナ5.0㎍とされています。成人男女が食事から補うべきビタミンDの目安量(1日)は、5.5㎍と言われていますので、いかにイワナが優れた食材かがわかります。

カルシウム

カルシウムは骨にとって欠かせない栄養素で知られていますが、筋肉の収縮や神経を安定させる働きもあります。食事から摂り入れたカルシウムは、運動による刺激で吸収が促されます。適度な運動もあわせて取り入れられると良いでしょう。まずはウォーキング程度の運動からでもかまいません。レベルアップをするなら、おもりをつけながら行うのも良いですね。

カリウム

摂り過ぎた塩分の排出を促し、体内の水分バランスを調整してくれることから、むくみ対策として期待されています。カリウムは、魚類はもちろん、野菜や果物、大豆、肉類などにも含まれています。

その他イワナには、ビタミンB2、亜鉛、質の良い脂であるDHA・EPAなども含まれています。

【番外編】イワナの稚魚に含まれるカルシウムに注目!

カルシウムは骨や歯の材料ともなる大切な栄養素。『日本人の食事摂取基準2015年版』における推奨量は、30歳以上で650~700mg/日となっています。しかし、『平成29年国民健康・栄養調査』による成人の摂取量の平均値は509mg/日。明らかに不足している状況です。

近年、子どもにもカルシウムが不足していると言われています。家族みんなで、美味しくカルシウム補給できるおかずがあったら……、重宝しますよね。そこでおすすめしたいのが、渓流食堂さんの「イワナの稚魚の唐揚げ」です。

ここでは【番外編】として、渓流食堂さんの「イワナの稚魚の唐揚げ」を他の食材と比較しながら、ご紹介していきます。

【食材100g当たりのカルシウム量】

  カルシウム量(㎎)
渓流食堂さんのイワナの稚魚の唐揚げ 630
チーズ 630
イワシ(丸干し) 570
普通牛乳 110
木綿豆腐 86

まず、カルシウムが豊富なことで有名な普通牛乳について見ていきます。含まれるカルシウムの量は、100g中110mg。コップ1杯なら、約220mgも摂れる計算です。

また、牛乳の魅力としては、カルシウムとリンのバランスが理想的であること、そしてカゼインホスホペプチド(CPP)の働きによりカルシウムの吸収が良いことが挙げられます。

一方で、「イワナの稚魚の唐揚げ」はどうでしょうか。「イワナの稚魚の唐揚げ」は、なんと100g中630㎎もカルシウムが含まれているんです。牛乳と比較すると実に5.7倍!もちろん、稚魚は唐揚げなので、牛乳より油の量は多くなります。しかし、骨ごと食べられることから、カルシウムを摂取するには最適です。

100g中のカルシウム量は、チーズにも匹敵します。イワシ(丸干し)や木綿豆腐よりも多いのに加え、カルシウムの吸収をサポートするとされるビタミンDも含まれています。

もともとイワナは脂質が低めなので、油との相性が良いのも魅力のひとつです。唐揚げなら子どもから大人まで年齢に関係なく、美味しくカルシウムを摂ることができます。実際、渓流食堂さんにやってきたお子さんたちも、みな美味しく食べてくれています。ご家庭の一品として加えてみるのはいかがでしょうか。ぜひ、他の牛乳やチーズなどさまざまな食材を摂りながら、「イワナの稚魚の唐揚げ」も味わってみてください。

渓流魚は現代の食卓にぴったり

横川仁美

渓流食堂(養殖場白山堂)さんの渓流魚の栄養面について解説してきました。

高たんぱく、低脂質の渓流魚は現代人の食卓にぴったりな食材のひとつと言えると思います。

渓流食堂さんの様々な調理法から生み出される渓流料理、今後ぜひ注目していきたいですね。

横川仁美さんのブログはこちら

【参考文献】

  • 日本人の食事摂取基準 2015
    http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
  • 平成 29 年国民健康・栄養調査https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html
  • 七訂食品成分表2019/香川明夫 (監修)/女子栄養大学出版部 (2019/2/20)
  • これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典/中嶋 洋子 (監修)/主婦の友社 (2017/9/27)
  • 図解 栄養の基本がよくわかる事典/安田 和人 (著)/西東社 (2006/12)
  • よくわかる栄養学の基本としくみ/中屋 豊 (著)/秀和システム (2009/5/27)
  • 京都府漁業協同組合http://www.ktgyokyo.jf-net.ne.jp/
  • 一般社団法人Jミルク
    https://www.j-milk.jp/knowledge/nutrition/berohe000000oedv.html
  • 骨粗鬆症財団
    http://jpof.or.jp/pdf/LS2014_03_02AJ.
    pdf